History 第十章 展開期(平成後期~令和)外航海運に本格進出

創業120周年と青野正会長・青野力社長の新体制

平成26年(2014)、青野海運は、創業120周年を迎えた。
青野海運では、「社会に奉仕・還元する」をコンセプトに据えて、次のとおり創業120周年記念事業を展開した。
6月1日、青野海運グループのホームページをリニューアルして、新たに「社史」を掲載。新しいロゴを制定し、社章・名刺を作成、配布。新たに制定されたロゴで社旗を作成。
7月19日、新体制記念祝賀会を開催(リーガロイヤルホテル新居浜)。
7月25日、にいはま納涼花火大会に青野海運グループ単独で協賛。
12月、青野記念奨学基金の対象者を拡大。

青野海運では、この機をとらえて世代交代を図り、青野正が代表取締役会長に就任して、青野力が代表取締役社長に就任した。
「この業界に身を置く者として常々感じているのは、船に載っているのは荷物だけではなく『荷主様、銀行、保険、造船、その他この船に係るあらゆる人々の想いと財産を一緒に運んでいる』ということです。私が最初に船舶投資の決定を行った船は、忘れもしない『第三十光輝丸』ですが、それから7年間で建造した船は計14隻にのぼります。その全てに語り尽くせない思い出があり、当社の運航船を見るにつけて、お世話になった皆様一人一人の顔が浮かび、自然と感謝の気持ちと充実感で胸が熱くなってしまいます。私の経営人生がどれくらいの期間になるか分かりませんが、世の中のお役に立てる船を、1隻でも多くこの世に送り出すことが私の使命であり、立ち止まることなく積極的に事業展開して参ります。青野海運グループの大船団で、21世紀をともに航海していきましょう」
青野力社長は、力強く抱負を語った。

青野正会長・青野力社長の新体制は、役職員の士気をいっそう高めた。
「青野正会長は、人格者です。周囲に対する気配りが細やかで、穏やかで話しやすい雰囲気の方で、大声で叱責する姿を一度も見たことがありません。過去に私の指導が行き届かず、大事な荷主さんの船を任された船員が、長袖着用を義務付けられているにも関わらず、半袖を着用している姿を荷主さんに見つかって、大問題になるという失態を演じました。その結果、契約は解除されて、他所の会社に仕事をとられてしまいました。それでも、青野正会長は、私に叱声を浴びせることはなさいませんでした」

「若くして後を継がれた青野力社長も、人柄の良い方です。飯野海運に出向していたとき、外航船で航海した『船乗り』の実務の経験を有されるとともに、対外交渉にも長けておられます。外国人を相手にして臆することなく堂々と渡り合うその姿は、社員の目に頼もしく映ります」
「海運事業を取り巻く環境は、年々、厳しさを増しておりますが、青野海運は、青野力社長が積極果敢に事業の拡大を図り、背後に青野正会長がどんと控えておられます。今後とも、青野正会長と青野力社長のもと、役職員が一丸となって荒海を乗り越えて、青野海運が大きく発展することを念願しております」
(元・青野海運執行役員 三宅勝「青野海運の半世紀を回顧して」)

「お二人の人柄を一語で表すなら、青野正会長は『包容力』、青野力社長は『決断力』だと思います。青野正会長は、社員への目配り、気配りが行き届いており、しばしば声をかけてくれます。お話をしていると何故かほっとする安心感があります。また、青野力社長が、広く集めた情報をもとに青野正会長や執行役員等の意見を聞きながら『青野丸』の舵を握り、進路を定めていく様には感服させられます」
(青野海運シニアアドバイザー 岸徹「青野正会長、青野力社長の下で勤めて」)

「私の結婚披露宴で、青野正会長に祝辞を頂戴しました。そのなかでいただいた言葉は、孔子が自分の信条にしていた『恕』でした。弟子の子貢が『一言で一生実行していく徳目があるでしょうか?』と質問すると、孔子は『それは恕か』と答えられた。この言葉は、『己の欲せざる所、人に施すこと勿れ』――『自分がされたくないことは、人にしてはならない』『相手の心になって、自分の心を』というような意味ですと説明して下さいました。私が小さい頃に父から叱られる際、いつも言われていた言葉であったので、披露宴の場で同じ言葉を下さった会長の祝辞に驚いたことを、つい昨日の出来事のように覚えています。お互いを思い合って良い家庭を築いて下さいとのお言葉でしたが、『和合』を大切にする青野海運の精神でもあるのかなと自分なりに解釈し、お客様の気持ちになって、船員さんの気持ちになって、同僚の気持ちになって、代理店業務に取り組んでいこうと思えた出来事でした」
(青野海運営業本部船舶代理店部部長 森本誠崇)

「お盆時期に硫酸輸出が連続3船あり、私たちが現場に張り付けで業務していた際、青野正社長(現・会長)がアイスの差し入れを持って陣中見舞いに来てくれて、激励いただいたことが強く印象に残っています」
「私の前職は小売業でしたので、青野力常務(現・社長)から、これまで従事してきた流通と青野海運が担っている物流の違いについてご教授いただき、日本の製造業における物流の重要性を再認識しました」
(青野海運経営管理本部総務・企画部部長 國見英志)

「青野正会長は『気遣い』の方です。誰かが咳をすると、さりげなくのど飴をデスクにおいて下さるなど、いつも社員一人一人に目を配り、些細な変化にも気づいて声をかけて下さいます。毎朝、青野正会長が出社されると、事務所の空気が和らぎ、なんともいえない安心感に包まれます」
「青野力社長の『決断力』『折衝力』、そしていかなる時も『毅然としたその姿勢』に大きな信頼を抱いております。青野力社長の『社員は家族』という言葉どおり、その経営者の想いこそが青野海運のチーム力の根源なのだと思います。現在も常に社長室のドアは開かれており、私たちがノックすれば、どんなにお忙しい時でも必ず時間をつくって社員と向き合って下さいます」
(青野海運経営管理本部経理・理財部課長 竹田早矢香「130周年史」)

平成26年(2014)6月、本社に外航営業部を新設し、担当部長には佐々木豊隆が就任して、外航海運部門の組織強化を図った。
また、青野正会長と青野力社長は、社員一人一人の人格や個性を尊重して、男女の差別をなくし、男性も女性も各人が持てる能力をいかんなく発揮できる機会の提供に努めている。令和5年(2023)6月には経営管理本部経理・財務部の竹田早矢香を、翌年6月には経営管理本部総務・企画部の原田奈美子を、女性管理職に登用した。

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